【BlackView BV6600PRO レビュー】手軽にサーモグラフィが撮れる手頃なタフネススマホ
非接触や離れた場所の温度測定に便利なのがサーマルカメラ。有名どころだと映画プレデターのナイトビジョン、最近では人の体温を簡単に測れる建物の入り口とかに良く置いてあるアレとかです。DIYや自作パソコンする人にとっては熱源の特定、暗闇での動物探しや人探し、暑い真夏の屋外で涼しい場所を探すなど、一般的にも使い道はいくつか考えられます。
このサーマルカメラを手軽に使ってみたいと思い、BlackViewのBV6600PROを購入。サーマルカメラとして使うことだけを想定して購入したので、その使い勝手を中心にレビューしていきます。
- ガチの業務用ではなく、手軽でそれなりに使えるサーマルカメラを探している人
- サーマルカメラ内蔵スマホの中で、とにかく安く試してみたい人
- ただ頑丈なだけでなく、現場作業ツールとしての機能があるタフネススマホを使いたい人
一家に一台!サーマルカメラがあればいろいろな場面で使える!
サーマルカメラは、あらゆる物体から発されている目には見えない遠赤外線をその強度に応じて可視化してくれるカメラ。遠赤外線は、物体の温度によって強度が異なるため、間接的にその物体の温度を測っていることになります。環境の明るさに関係なく、また離れている非接触の物体でも簡単に温度分布(サーモグラフィ)が分かることが大きなメリット。
普段からDIYをしたり、宅内での簡単な工事をする人にとっては、例えば熱源の特定をしたり、ケーブルの断線箇所を見つけたり、冷暖房機器の効き具合を確認したり、一見見ただけでは分からないような表面温度を可視化できることがサーマルカメラの使用用途。それ以外にも、監視カメラや盗聴器の発見や、暗闇に隠れている動物探しなどにも使えたりします。
このような使い方以外にも、サーマルカメラで測れると色々便利に使えるんじゃないかと思い、実際使ってみたいと考えました。んでもって、ついでに我が家の盗聴器・隠しカメラを探し出してやろうと思い立ったわけです。そのほかにも、面白い使い方ができそうなので、使用例についてはBlackViewの公式サイトを参考にしてみてください。
もともと業務用のサーマルカメラが多い中、最近ではスマホに接続するタイプが発売されていたり、必要な人にとっては意外と手に入れやすい環境。そして、サーマルカメラ内蔵のスマホもちらほら出回るようになり、今回はBlackViewのBV6600PROを入手しました。
同様のスマホでは、CATやulefoneなどのタフネススマホメーカーからも販売されておりますが、数あるサーマルカメラ内蔵のスマホの中で、BV6600PROを選んだのには以下のような理由。
- サーマルカメラ内蔵スマホの中でも、3万円台から買えるお手頃な端末
- YouTubeレビューを見る限り、使い勝手が良さそう
- SoCがミドルよりのローエンドSoCで、そこそこ使えるようであれば、メイン端末として使えるかも? ⇒使えませんでした
BV6600シリーズには、PRO以外にもBV6600 EやBV6600無印がありますが、これらにはサーマルカメラは入っていません。サーマルカメラ内蔵としては上位モデルのBL8800 PRO、BV9800 PRO、BV9900 PROがあります。デザインとしてはBV9900PROが好みなんですが、今回はサーマルカメラ用として割り切って購入するため、値段重視でBV6600 PROを選択。
というわけで、早速使ってみました!
BlackView BV6600PROのフォトレビュー
基本スペック
BV6600PRO | |
---|---|
SoC | MediaTek Helio G35 MT6765G |
RAM/ストレージ | 4GB/64GB |
メインディスプレイ | IPS LCD 5.7インチ Dragontrail Glass |
アウトカメラ | メイン 16MP/f2.0 サーマルカメラ 5MP |
インカメラ | 8MP/f2.0 |
生体認証 | 指紋認証(サイドボタン) 顔認証 |
防水防塵規格 | IP68(IP69K) MIL-STD-810G |
WiFi Bluetooth | 11a/b/g/n/ac Bluetooth 5.0 |
充電 | 有線:18W |
バッテリー | 8580mAh |
本体サイズ | 79.4 x 159 x 18mm 325 g |
付属品をチェック
- BV6600PRO本体
- 充電ケーブル USB-A to USB Type-C
- 18W USB充電アダプタ(EUプラグ)
触らなくても見て分かるすごく頑丈なスマホ!
以前、Galaxy S7 Activeという準タフネススマホを使っていましたが、BV6600PROはもはや別次元。ガチのタフネススマホ。サイズからも分かる通り、大きさ、厚さ、重量すべてがヘビー級。一般ユーザー向けスマホとはわけが違います。まるで要塞のようなスマホです。
ボディ全体が滑りにくいラバー素材となっており、ところどころ金属パーツが使われています。近年のスマホのデザイン路線とは大きくかけ離れていますが、刺さる人には刺さる無骨なデザイン、嫌いではない!タフネススマホとしては質感はとてもいいと感じます。
右側面には電源ボタンとボリュームボタン。左側面にはSIMトレーとカスタムボタンが配置されています。上面には何もなく、下面には今では主流な充電用USB Type-Cコネクタとスピーカーが配置されています。Galaxyスマホではフタ無し防水が当たり前でしたが、MILスペック準拠のためなのか、BV6600PROはコネクタ蓋があります。
背面は、3眼のカメラレンズとストラップホールがあります。3つのカメラのうち、2つがサーマルカメラとして使用するので、実質2眼。カメラ周りは、金属でおおわれており、頑丈さを物語っています。こんなタフネススマホであっても、NFCは使えるようで、真ん中にはNFCロゴがあります。残念ながらワイヤレス充電は非対応。
タフネススマホというジャンルにおいては、以下のような印象を持っていますが、このBV6600PROもまさにその通りのスマホ。
タフネス具合もガチのもので、MILスペック準拠の耐衝撃性。またあまり聞きなれない防水性能IP69Kという等級は、現在規格されている中で最高峰のもの。ホコリが侵入しないIP6Xの防塵性と、高温高圧の水流にも耐えられるIPX9Kの防水性を持っています。
- 大きくて重く、ゴツゴツしたスマホが多い
- 防水防塵は当たり前!とにかく頑丈でタフ、MILスペック準拠も当たり前
- とにかく大容量バッテリー
- アウトドアやヘビーデューティーに適したオリジナル機能が多い
- スマホスペックはローエンド~ミドルエンドクラス
思ったより高機能で便利なサーマルカメラ!
一般的なスマホ選びでBV6600PROを検討することはまずない。おそらくほとんどの人が「サーマルカメラ」に魅かれて選ぶスマホになるでしょう。BV6600PROには、サーマルカメラシェアNo.1のFLIR(フリア)の技術が使われています。測定器並のレベルは求めないものの、ある程度の信頼性がありそうです。
正直使う前はあまり期待してなかったんですが、いざ使ってみると使える便利な機能が多く搭載されており、これは十分に使えると感じました!
サーマルカメラアプリ「My FLIR」
サーマルカメラを起動するには、通常のカメラアプリではなく、「My FLIR」というアプリをタップして起動します。起動直後、温度分布の表示方法を選択できます。一番なじみのある「鉄」を選択することにします。
すると、すぐにサーモグラフィを見ることができます。周囲の温度分布をリアルタイムに見ることができるのは非常に面白いです。表示まで多少遅延はありますが、サーモグラフィとしてはあまり気にならず、ほぼリアルタイムに見ることができます。
そのBV6600PROのMyFLIRアプリの反応速度が気になることだろうと思うので、テストとしてシンクに熱湯を注ぎ、その後水で冷ましたときのサーモグラフィ動画を載せておきます。多少ラグがありますが、まずまず使える感じだと思います。
サーモグラフィが鮮明で非常に見やすい!
このアプリの良いところは、MSX(スーパーファインコントラスト)を使うことで、サーモグラフィをより鮮明に見ることができます。通常のサーモグラフィーは単純に温度分布を表示するだけなので、どうしても対象の輪郭がぼやけてしまいます(写真左)。そこで、補助カメラで通常の写真を撮影して(写真中)、それらを合成することでより鮮明なサーモグラフィーを表示することができるようです(写真右)。
最大5か所の温度測定が可能!
画面上部の十字ボタンを押すことで、指定したポイントの温度のリアルタイム表示ができます。もちろん測定ポイントは画面内で自由に動かせて、なんと最大5か所の同時測定が行えます!測定ポイントにそれぞれ名前を付けて、写真を撮ることも可能。
指定ポイント以外でも、画面の一部エリア/画面内全部の平均温度・最低/最高温度の表示を同時に行うことも可能。私が以前職場で使用したことのある安物サーマルカメラでは、1点しか温度測定ができなかったので、これはかなり使い勝手が良いです。測定精度は検証できませんが、どのあたりに熱が多く溜まっているかはこれで一目瞭然。
静止画以外に動画撮影にも対応!細かい表示カスタマイズも可能!
静止画だけでなく、動画でサーモグラフィ撮影にも対応。例えば、時間ごとにどう温度が変わっているかログをとりたい時なんかにも使えそうです。他、タイムラプスやYouTube Liveにも対応しているようです。
そのほかにも、画面内に表示する温度範囲の上限下限を設定することで見やすく調整できたり、物体の放射率を変更することで光沢表面の測定に調整できたりと、分かる人が使えば細かい便利な測定もできそうです。
メインはサーマルカメラ、スマホ機能はあくまでおまけと考えた方がいい
スマホとしての性能は、ローエンド~ミドルエンドクラス。Helio G35(MT6765G)は、Snapdragonでいえば400番台のローエンドSoCより少し上程度の性能です。使う前は正直全く期待していませんでしたが、これが思ったよりも健闘しており、ブラウジングやSNSアプリでの動作は問題なくスムーズで、YouTubeアプリでの動画視聴も特にカクツクようなことはなく、普通に視聴できました。Androidを搭載しているので、普通のスマホアプリをインストールすることが可能です。
通常カメラは、記録写真を撮るにはまずまずな画質。ただし、ダイナミックレンジがかなり狭く、すぐに白飛びするか黒つぶれしてしまう印象。接写もあまり寄ることができないので、マクロ撮影は厳しい。ポートレート撮影が使えるので試してみましたが、これはダメ。普段はS22Ultraのカメラで慣れてしまっているので、残念ながらBV6600PROのカメラで積極的に撮ろうとは思えませんでした。
基本性能的にもRAM 4GB、ストレージ64GBとメインでは使うには心もとない性能。もう少し予算が出せるならば、RAM 8GBと上位のSoC搭載のモデルを選んだ方が普段使いしやすいと思います。BV6600PROは、スマホの性能は求めず、あくまでもサーマルカメラがメインと割り切った使い方ができる人ならおススメできます。スマホ機能はあくまでおまけ。サーマルカメラ単体ではかなり高額なものですが、スマホ機能付きのサーマルカメラが3万円台で購入できると考えれば、コスパはいいんじゃないでしょうか。
バッテリーお化け!モバイルバッテリーとして別スマホへの充電も可能
8580mAhなんて、もはやモバイルバッテリー並みのバッテリー容量。ただでさえSoC自体ローエンドで低消費電力なんですが、物理的に超大容量のバッテリーを積んでいるので、電池が全然減りません。しかも、Type-CコネクタはUSB給電も対応なので、正真正銘モバイルバッテリーとしても使える。
8580mAhのモバイルバッテリーが325gといえば、ちょっと重い部類でしょうが、スマホとしても使えてサーマルカメラが内蔵していると考えたら、今使っているモバイルバッテリーの置き換えとして検討できるかも?(いや、ちょっと無理があるかw)
BV6600PROのサーマルカメラで色々撮影してみた作例
身近なものをサーマルカメラで撮影してみました。肉眼で見ただけではわからないようなことも、サーモグラフィを見れば一目瞭然。しっかり熱源を特定することができます。
キッチンを撮影
夜中のキッチンをサーマルカメラで見てみました。シンク下で光っているのは、高温高圧で洗っている食器洗浄機。炊飯器も、この時は保温状態だったので、かなり熱を持っています。冷蔵庫は、側面と背面がものすごく発熱しています。キッチンカウンターにあるAmazon Echoと子供見守りモニターも、消費電力は少ないですが、きっちり発熱しています。
我が家のインターネット回線のONUとルーターは、パントリーの上段に設置してあります。通気性もないため、かなりの熱が籠っていることがわかります。これはなんとかせなアカンかも…。
趣味部屋・マイニングリグを撮影
趣味部屋においてあるマイニングリグを撮影。夏の季節、この部屋はもう灼熱地獄。見てて面白かったのが、同じRTX3070でもトリプルファンモデルの方がツインファンモデルよりもしっかり冷えてることが分かります。自作パソコンを組む人にとっては、マザーボード上の発熱箇所やPCケースの排熱状況を視覚的に確認できるので、いろいろ便利な使い方ができそうです。
USBの充電口もしっかり発熱しています。マイニングリグの監視用カメラとして設置してあるSwitchbotカメラもかなり熱い。やはり電気機器で通電している以上、なにかしらの熱を持つことが分かりました。幸い今回の宅内調査では発見しませんでしたが、盗聴器や盗撮カメラなんかも反応するはずなので、簡易的な調査には役に立つかもしれません。
人物を撮影
深夜に真っ暗な寝室を撮影してみました。もちろん肉眼では何も見えないんですが、きっちりと妻と娘が寝ていることが分かります。また簡易的ではありますが、人の額の温度も測ることができます。測定値の正確さは不明ですが、例えば人ごみの中で、明らかに発熱している人なんかをこっそり探し出したりできるかもしれません(悪用厳禁!)。
屋外を撮影
また夏の暑い時期だと、屋外でどのあたりが涼しいかが視覚的に把握できます。ピクニックの場所取りやコインパークの駐車位置など極力温度が低い場所を探し出すことができそうです。
スマホのAntutuベンチマークを動画撮影
最後に、Galaxy S22 UltraのAntutuベンチマーク実行による発熱を動画にしてみました。実際のベンチ画面をピクチャーインしていますが、バックグラインドソフトもたくさん動いている状態での測定なので、スコアは参考になりません。
実行と同時にスマホ本体がみるみる熱くなっていく様子が分かります。カメラ横の発熱が一番高くなっていますが、S22 Ultraの分解画像と照らし合わせると、恐らくSoCやメモリなどのロジックボードが集まっている部分。
なんで、スマホが熱くなったときや、処理が遅くなっているときは、この部分を集中して冷却すればいいことが分かります。
まとめ
以上、スマホ機能搭載のサーマルカメラBV6600PROのレビューをお届けしました。
- ガチの業務用ではなく、手軽でそれなりに使えるサーマルカメラを探している人
- サーマルカメラ内蔵スマホの中で、とにかく安く試してみたい人
- ただ頑丈なだけでなく、現場作業ツールとしての機能があるタフネススマホを使いたい人
BV6600PROのサーマルカメラは多機能で十分実用性があるものの、スマホとしての性能がローエンドクラスなので、サーマルカメラとしての端末と割り切れるのなら十分におすすめできるタフネススマホでした。もし、予算に余裕があり、スマホとしてもしっかり使いたいのであれば、上位モデルを検討するのがいいかもしれません。
ひとまず、ここいらで。
ほな、またぁ!!